聞きやすいアナウンス音声をめざして【Part 6】

同じ映像コンテンツに対して、同じ内容のナレーションを異なる声質で読み上げた音声と組み合わせ作成した動画を見たとき、私たちはその動画に対する印象が変わるでしょうか。そのことを調べるため、4つの動画を作り実験をした卒業研究を紹介します。この卒業研究は、2021年度に中山美奈さんによって実施され、現役アナウンサーの鹿島田千帆にご協力いただきました。映像コンテンツは基本的に同じものを使用し、荒井研究室で開発された声道模型に関するものとなっています。

まずは1つめの動画です。この動画の音声は、高めの声で読むようにお願いしました。音響分析の結果、声の高さは高く、速さも速いものとなっていました。ただし、間を適度にとってもらいました。

Introduction_to_VTM1

2つめの動画では、ニュースを読むような説得力のある低い声で読むようにお願いしました。音響分析の結果、声の高さは低く、速さは遅いものとなっていました。

Introduction_to_VTM2

3つめの動画では、抑揚を抑えた音声で読むようにお願いしました。音響分析の結果、声の高さは低く、速さは速いものとなっていました。

Introduction_to_VTM3

4つめの動画では、適すると思われる自然なナレーション音声で読むようにお願いしました。音響分析の結果、声の高さは中程度で、速さは遅いものとなっていました。

Introduction_to_VTM4

以上4つ動画を用いて、映像・音声に抱いた印象を問う調査を48名に対して行いました。その結果、映像評価に関する項目(「声道模型への興味が沸いた」や「視聴しやすかった」など)に対して4つめの動画が一番高く評価されました。その理由を分析したところ、全動画音声に関して「生き生きとした」「はっきりとした」「心地の良い」「気持ちがこもった」などの項目と映像評価の間に高い相関があり、4つめの動画の音声はこれらの項目について高く評価されていたことが関係していると推測されます。

録音には鹿島田さんにご協力をいただきましたが、瞬時に様々な声質でナレーションの音声を切り替えてくださり、現役アナウンサーとして長年、ご活躍されているプロの技を間近で感じることができました。ありがとうございました。

録音当日の様子(2021年10月9日)
荒井研究室内防音室にて