大きい声を出したり、長時間、声を出し続ける場合を考えてみましょう。まず声を出す準備として胸・腹式吸気により息を大きく吸います。発声時には、閉じられた狭い声門を、声帯を振動させながら息を吐き出します。このとき吐き出す力は主に腹筋の収縮力によります。なぜ、発声には腹式呼吸がすすめられるのでしょう。その第一の理由は息を吸ったり、吐いたりするときに、胸式呼吸に比べて腹式呼吸の方が息を吸う量が大きいこと、第二に発声のために吐く息の強さをコントロールする筋肉は、主に腹筋であり、その呼吸法はまさに腹式呼吸だからであります。
- Arai, T., “Virtual lung model for education in phonetics and speech science,” Acoust. Sci. Tech., 37(4), 173–174, 2016.