1. 学会活動
1.1 IEEE
2010年からIEEE Signal Processing SocietyのSLTC (Speech and Language Technical Committee) の委員を務めています。それに伴って、2009年からは国際会議ICASSPの査読委員も務めています。
1.2 INTERSPEECH
音声コミュニケーションに関する国際会議 “INTERSPEECH”ですが、2010年は日本(幕張)で開催され私は実行委員(財務委員長)を務めました。その後処理が2011年に入ってからもしばらく続きましたが、それも無事に終わりました。
2011年のINTERSPEECHはイタリアのフィレンツェ(Florence)で開催され、荒井研から1件の発表がありました[2011_04]。その1件は、“Show and Tell”というスペシャルセッションでの発表でした。そのセッションは通常の研究発表とは違ってデモンストレーションが中心のセッションです。そこに、私たちが以前から取り組んでいる声道模型のデモを申し込んだところ、採択。当日は声道模型を使って、特に基本周波数を変えることによってイントネーションを付加したり、あるいは歌を歌う試みも披露しました。それらのデモが評価され、一般投票の結果、Show and Tell Awardを受賞しました。Scientific Review Committeeとして査読にも関わりました。
1.3 日本音響学会学生優秀発表賞
日本音響学会の2011年春季研究発表会にて、荒井研の2名の学生が学生優秀発表賞を受賞しました。
1.4 日本音響学会ビギナーズセミナー
2008年からビギナーズセミナーの一部として位置づけられるようになったサマーセミナーですが、ここ何年間か毎年、実行委員兼講師として参加してきたものの、2010年は残念ながら参加できませんでした。さらに2011年は東日本大震災の影響もあり、サマーセミナー自身が開催されませんでした。
1.5 日本音響学会編集委員会
2005年から編集委員会会誌部会の委員として日本音響学会誌と英文誌Acoustical Science and Technology (AST) の編集に携わっています。
1.5.1 日本音響学会誌の解説
北原先生と田嶋先生に音声分析ソフトウェアであるPraatに関する解説記事をご執筆いただきましたが、その編集を私が担当しました(2011年の日本音響学会誌第67巻8号に掲載)。
1.5.2 日本音響学会誌の「子どもの音声」に関する小特集
我が子が生まれてから、私が「子どもの音声」にも興味を持ち始めたこともあり、小特集「子どもの音声」に関する小特集を担当することになりました(2012年の日本音響学会誌第68巻5号に掲載)。
1.6 日本音響学会音響教育調査研究委員会
日本音響学会では音響教育調査研究委員会委員を2003年から務め、2005年からは委員長に就任し6年にわたり委員会を取りまとめてきました。その委員長の座も2011年に退くことになりましたが、引き続き委員として様々な取り組みを進めています。
1.6.1 音響教育研究会
本委員会が主催する「音響教育研究会」が、2011年は2回、1月と6月に開催されました。1月の研究会は本研究会による初めての単独開催で、「音を聴いて学ぶ教育プログラム」というテーマで東京藝術大学にて行われました(荒井は座長を務めた他、荒井の発表については[2011_06]をご参照ください)。6月の研究会は、名古屋大学にて音声研究会との共催で行われ、荒井が関係する発表は2件。そのうちの1件は、荒井による招待講演でした(荒井に関する発表については[2011_09, 2011_10]をご参照ください)。
1.6.2 博物館・科学館との連携
2006~2009年の4年間、国立科学博物館で「音の科学教室 ―音のふしぎ・声をつくろう―」が開催されてきました。この科学教室は日本音響学会との共催で行われ、運営に当たって音響教育調査研究委員会有志の協力を得ていますが、2010年は開催されませんでした。しかし、この「音の科学教室」はまた2011年から再開され、2011年はパイオニア(株)の小野谷さんによるスピーカ工作が行われました。
一方、2007~2010年同様、2011年8月にはサイエンススクエアに「音や振動に親しもう!」と題して音響教育調査研究委員会のブースを出展しました。出展内容については、新たに荒井研から声道模型、スペクトログラム分析、スペクトログラムを再び音声に再合成するデモなどに関する展示が加わりました。
1.6.3 日本音響学会2011年春季研究発表会
2008年秋季研究発表会から音響教育のセッションがプログラムに組み込まれていますが、2011年春季研究発表会では3件の一般講演があり、そのうちの1件を荒井が発表しました([2011_14]を参照)。
1.6.4 日本音響学会2011年秋季研究発表会
2011年秋季研究発表会では6件の一般講演があり、そのうちの1件を荒井が発表しました([2011_27]を参照)。
1.6 日本音響学会音バリアフリー調査研究委員会
2006年に新しく委員会が発足して以来、音声分野の代表として委員を務めています。
1.6.1 日本音響学会2011年春季研究発表会
2011年春季研究発表会ではスペシャルセッション「日常生活環境下における音声聴取とその評価」が開催され、音バリアフリー調査研究委員会のメンバーと共同で音声聴取能力測定に関する発表を行いました([2011_15, 2011_16]を参照)。また、一般セッションでは座長を務める他、同じセッションで荒井研からの発表が1件ありました([2011_17]を参照)。
1.6.2 日本音響学会2011年秋季研究発表会
2011年秋季研究発表会では、一般セッションの座長を務めました。
1.7 日本音響学会国際渉外委員会
2005年度から引き続き、委員を続けています。
1.8 日本音声学会
理事(国際交流委員会委員長)と評議員を引き続き務めました。また同時に、広報委員会委員長代理と、音声学普及委員会委員も務めています。
2. 音響教育・声道模型
2.1 進化し続ける声道模型
2011年は、INTERSPEECHのデモセッション “Show and Tell” にて、声の高さを変えられるような声道模型を中心に展示発表を行い、一般投票の結果、Show and Tell Awardを受賞しました [2011_04](1.2節参照)。
2.2 日立シビックセンター科学館
茨城県日立市の日立シビックセンター内にあるこの科学館が2010年にリニューアルオープンするにあたり、その際に新設された声道模型に関する展示を監修しました。その内容について、2011年の日本音響学会春季研究発表会にて報告しました[2011_14]。
2.3 声道模型のデモンストレーション
2011年も声道模型のデモンストレーションを様々なところで行いました:
- INTERSPEECH
デモセッション “Show and Tell” にて展示発表を行った結果、Show and Tell Awardを受賞(1.2ならびに2.1節参照)。 - 国立科学博物館
「サイエンススクエア」にて声道模型の体験型デモを行いました。 - 横浜共立学園高等学校
体験授業にて、講義とデモを行いました。 - 上智大学のオープンキャンパス
研究室の公開の一環として、声道模型を展示しました。 - 東京医科歯科大学
「大学院特別講義」として、「見て触って聴いて分かる、音声科学」というタイトルで講義を担当し、その中で声道模型のデモを含めた話をしました。 - アメリカRutgers大学
川原繁人先生の音声学の講義の中で、声道模型を使っていただきました。
2.4 小学生向け教材
我々が作った肺の模型の写真が、2005年以来、引き続き進学教室サピックス小学部の教材に採用されています。
3. 国際共同研究ならびに国内共同研究
3.1 石川工業高等専門学校
字幕プロジェクト(4.1節参照)に関して、金寺登先生と共同研究を進めています。その成果として、Pekが日本音響学会英文誌Acoustical Science and Technologyに原著論文を投稿しました。掲載された論文はこちらをご覧ください[2012_02]。
3.2 東海大学
2011年から程島奈緒先生(荒井研卒業生)が、東海大学に研究室をスタート。今までの研究プロジェクトも、共同研究の形で継続しています。2011年の成果はこちらをご覧ください[2011_10, 2011_19]。
3.3 国立精神・神経医療研究センター
言語聴覚士の廣實真弓先生と2008年から共同研究をさせていただいています。2010年度からは学外共同研究として本格化しています。荒井研側のプロジェクトメンバーは、安啓一、篠田貴彦。篠田の修士論文と共に、本プロジェクトも節目を迎えます。
4. 産学連携
4.1 株式会社フジヤマ
2004年から株式会社フジヤマ(吉井順子社長)と共同プロジェクトが進んでいます。2009年度からは学外共同研究として本格化しています。荒井研側のプロジェクトメンバーは、Pek Kimhuoch、上條賢。
株式会社フジヤマのホームページ:
http://www.fujiyama1.com/
4.2 TOA株式会社
拡声システムから流す音声の明瞭度改善に関して、TOA株式会社と共同研究が進んでいます。特に、栗栖清浩さんには大変お世話になっています。2006年度からは学外共同研究として本格化しています。荒井研側のプロジェクトメンバーは、安啓一、千葉亜矢子、松風要平、辻美咲、中村進、川島佑亮、さらに実時間処理に関しては山邊祐史、武田昌也がお世話になっています。2011年の成果はこちらをご覧ください[2011_07, 2011_10, 2011_19, 2011_21]。
TOA株式会社のホームページ:
http://www.toa.co.jp/
4.3 株式会社ホンダ・リサーチ・インスティチュート・ジャパン
残響音声のシミュレーションに関して、2009年から学外共同研究が始まりました。荒井研側のプロジェクトメンバーは、鈴木淑正。鈴木の修士論文と共に、本プロジェクトも節目を迎えます。
4.4 株式会社アニモ
国立精神・神経医療研究センター病院の廣實真弓先生との共同研究に関連して、2010年度に学外共同研究が行われました。
5. 助成を受けた研究プロジェクト
5.1 科学研究費補助金(基盤研究C, 21500841)
2009年度から私が研究代表者で、「人間の音声生成機構を分かりやすく説明する声道模型の改良とその音響教育応用」という3年間のプロジェクトが、2011年度で最終年度を迎えました。2011年の成果はこちらをご覧ください[2011_04, 2011_06, 2011_09, 2011_14, 2011_20, 2011_27]。
5.2 オープン・リサーチ・センター(ORC)整備事業
2007年度から情報理工学科田中衞先生が代表者の「人間情報科学研究プロジェクト」がスタートしましたが、2011年度で最終年度を迎えました。私は3つのグループのうちの1つ、「ヒューマン・コミュニケーション・グループ」のグループ長としてプロジェクトをリードしておりますが、本グループは文理融合型の研究体制を取っており、言語学専攻、心理学科認知心理学研究室を始めとする学内メンバーの他、学外では早稲田大学の近藤眞理子先生もメンバーに加わっていただいています。2010年度からは本プロジェクトは時限研究部門として「人間情報学研究センター」になりました。2011年の研究成果はこちらをご覧ください[2011_01, 2011_02, 2011_03, 2011_04, 2011_06, 2011_08, 2011_09, 2011_10, 2011_11, 2011_12, 2011_13, 2011_14, 2011_17, 2011_18, 2011_19, 2011_20, 2011_21, 2011_22, 2011_23, 2011_24, 2011_25, 2011_26, 2011_27]。
このORCプロジェクトでは、以下のように2011年度に2回の研究会を開催しました(敬称略):
【第1回ORC研究会】
講演者:Keith Johnson (UC Berkeley, USA)
タイトル:Three Studies on Compensation for Coarticulation
【第2回ORC研究会】
講演者:Hynek Hermansky (The Johns Hopkins University, USA)
タイトル:Multistream Processing of Speech
5.3 その他の研究助成
5.3.1科学研究費補助金(若手研究B, 21700203)
東海大学の程島奈緒先生が研究代表者で、「残響下で高齢者や非母語話者に明瞭な録音音声・肉声による拡声音声の調査」というテーマの研究プロジェクトが進んでいますが、2011年度で最終年度を迎えました。
6. 学内における文理融合・共同研究
6.1 外国語学研究科言語学専攻
前述のORCプロジェクトでは、石川彰先生、吉田研作先生、篠原茂子先生や、言語聴覚研究センターの先生方とご一緒させていただいています(5.2節参照)。
言語聴覚研究センターの進藤美津子先生、原恵子先生ならびに言語障害研究コースの皆さんとの共同研究も進んでいます。その研究成果の一部はこちらをご覧ください[2011_11, 2011_17, 2011_24, 2011_25]。
2011年度には、言語学専攻の修士論文に対して1件の副査を務めました。一方、荒井研の2011年度の修士論文では、遠藤辰徳の副査を進藤先生にお願いしました。
6.2 心理学科認知心理学研究室
前述のORCプロジェクトでは、道又爾先生ならびに認知心理学研究室の皆さんとも一緒に共同研究が進んでいます(5.2節参照)。
7. 社会への貢献・著書など
7.1 国立科学博物館
前述の1.6.2節をご参照ください。
7.2 日立シビックセンター科学館
前述の2.2節をご参照ください。
8. 荒井研内のニュース
8.1 ジャーナル論文
井下田貴子の論文が、日本文化研究に掲載されました[2011_01]。
Takako Igeta’s paper appeared on Japanese Cultural Studies [2011_01].
8.2 学位論文審査
荒井研のPek Kimhuochに対する博士号の学位審査が、2012年1月に行われました。学外からの副査は、日本放送協会の今井亨氏にお願いしました。荒井が主査を務める6人目の荒井研ドクターの誕生となりました。
8.2 Defense of Doctoral Theses
Pek Kimhuoch’s defense for the doctorate’s degree took place in January 2012. Off-campus committee member was Dr. Toru Imai,NHK (Japan Broadcasting Corporation). She was the sixth to complete the Doctor’s program under Arai’s supervision.
8.3 特別研究員・研究補助員
荒井研で2010年3月まで特別研究員をしていた程島奈緒が、2010年4月から東海大学で講師に着任しました。2009年10月から荒井研で特別研究員をしていた網野加苗は、2010年4月から科学警察研究所にて日本学術振興会の特別研究員になりました。
荒井研の増田斐那子は、2011年3月まで研究補助員。2011年4月から引き続き、荒井研のPek Kimhuochと井下田貴子が研究補助員でした。さらに、2011年3月まで荒井研の博士後期課程の学生であった安啓一が、2011年4月からプロジェクトRAになりました。
8.4 理工学部共同研究員
2011年度も引き続き、吉井順子さん(株式会社フジヤマ)、栗栖清浩さん(TOA株式会社)、小林敬さん(オークランド大学・ニュージーランド)が理工学部共同研究員でした。さらに、卒業生の増田斐那子さん、そして上智大学女性研究者支援事務局のソヌミさんが新たに共同研究員に加わりました。
8.5 客員教授
2007年10月から、産業技術総合研究所(産総研)の倉片憲治先生に客員教授としてご指導を受けています。これは、上智大学と産総研との教育研究協力に関する協定(連携大学院制度)によるものです。
8.6 Fastlの会
2007年から、リオン株式会社の皆様、産総研の皆様、そして上智大学、特に荒井研のメンバーを中心に、「Fastlの会」を開催しています。この会では、Fastl & Zwicker著の“Psychoacoustics”という教科書を輪読しています。
9. 学位論文題目
9.1 博士論文
Pek Kimhuoch
Voice activity detection in a noisy environment using the modulation spectrum
9.2 修士論文
松風要平
残響環境下における明瞭度改善のための定常部零挿入法が施された音声に対する自然性
遠藤辰徳
2 kHz付近の聴覚フィルタ帯域幅の広がりと単音節/de/, /ge/の弁別・識別との関係
-若年者と高齢者との比較-
辻美咲
残響環境における音声明瞭度改善を目的とした子音強調・母音抑圧による前処理