研究テーマ
- 音響学と音響教育
- 音響音声学を中心とする言語学分野(音声学・音韻論)とその教育応用(応用言語)
- 音声生成を含む音声科学と音声知覚を含む聴覚科学、音や音声を含む認知科学
- 実環境での音声知覚・音声明瞭度、音声信号処理・音声強調
- 音声に関する福祉工学・障害者支援、障害音声の音響分析や聴覚障害者・高齢者の音声生成や音声知覚
- 実時間信号処理を含む音声処理アルゴリズムの開発、音に関わるシステムやアプリの開発
- 音声の話者性
- その他、音に関する研究全般
1. 音響学と音響教育
2020年度も今まで同様、科研費(18K02988)による助成を受けながら主たる活動を進めた。人間の音声生成をわかりやすく説明する物理模型の開発を軸に、機構解明という科学的側面から、博物館・科学館や教育現場への応用までを引き続き実施した。見た目がより人間の顔に近い解剖模型タイプでは、2018年度に軟らかい舌を伴うモデルを開発していたが、それを発展させ2019年度に下顎が開閉する機構を追加したモデルとその改良版を開発した。それを受け、2020年の国際会議INTERSPEECHではそれらの比較をした結果を発表した。また、2019年から2020年にかけて軟らかい唇を追加したモデルも開発していたため、2020年度にその軟質口唇モデルを用いた実験も行った。
音源ではリードのサイズと素材を変えて子どもから大人までの声をカバーできるよう検討していたため、声道模型についても改めて成人男性のみならず、成人女性や子どものサイズについて再検討を行った。また、リード式音源について安定的に音が出て、さらに新型コロナウイルスの感染が拡大する中、衛生的に安心して利用できるエアポンプ用リード式音源を開発した。また、スライド式の声道模型と音源をオンライン授業用に入手しやすい材料で工作できるようにも工夫した。
今まで開発してきた様々な模型と教材等を整理して教育プログラムを体系化した内容は、すでに教科書の1章分として刊行されているが、それを含めた教育活動も引き続き進めた。国際音声コミュニケーション学会のDistinguished Lecturerとして、2018年にインドネシア(3都市4大学)と2019年にインド(2都市2大学)にて講義等を実施したが、その縁でインドの科学館(The Regional Science Centre, Guwahati)と連携してきた声道模型に関する展示は2020年度の終盤にほぼ完成した。その他、国内外の博物館や教育機関等とも連携し声道模型を使っていただく他、Acoustic-Phonetics Demonstrations (APD)のサイトからは声道模型の3Dプリンタ用ファイルに加え、動画の英語版も公開された。特に2020年度は、新型コロナウイルス感染拡大に伴い、オンライン教材の需要が増し、国内外の皆様に活用していただいている。その他、音声生成機構の解明はNHK Eテレ「えいごであそぼ with Orton」実験監修やNHK総合「ガッテン!」などでも引き続き活かされた。
上記のように博物館・科学館や教育機関等との連携が要となっているが、国内外での連携が進んでいる。海外では、韓国、カナダ、ドイツ、インドとの連携が、また国内では東京医科歯科大学、国立リハビリテーション学院にて声道模型のデモを交えた講義を行った。また、豊橋技術科学大学とは共同研究によってスーパーコンピュータ「富岳」によるシミュレーションの実験などの結果を報告した。
2020年度においては、本テーマとして以下の研究も含まれる。
- 「単音節/ma/を声道模型で発した際の音声知覚」(大学院研究)
- 「言語聴覚士と音響教育」(国内共同研究) ※科研費(20K03074)による
- 「人工声帯に関する研究」(国内共同研究) ※豊橋技術大学との共同研究
2. 音響音声学を中心とする言語学分野(音声学・音韻論)とその教育応用(応用言語)
2020年度においては、本テーマとして以下の研究などが含まれる。
- 「中国語学習者に関する研究」(国際共同研究)
- 「有声・無声破裂子音について」(国際共同研究) ※科研費(17F17006)による
- 「韓国語の母音の変化について」(国内共同研究)
- 「超音波診断装置を用いた発音時の調音器官の可視化」(国内共同研究)
- 「日本語のピッチアクセントに関する研究」(国内共同研究)
- 「韓国語の音声について」(国際共同研究)
- 「イタリア語の発音に関する研究」(国内共同研究・大学院研究)
- 「日本語を母語とするスペイン語学習者の発音や聴取について」(大学院研究)
- 「日本語母語話者に対する日本語や英語の子音や母音について」(国内共同研究・大学院研究)
3. 音声生成を含む音声科学と音声知覚を含む聴覚科学、音や音声を含む認知科学
2020年度においては、本テーマとして以下の研究などが含まれる。
- 「発声と心理学」(卒業研究)
- 「聞きやすいアナウンス音声の研究」(国内共同研究)
- 「音声に対する人間の修復・補完能力に関する研究」(国内共同研究・大学院研究)
- 「純音に対する言語表現について」(国内共同研究・大学院研究)
- 「マルチモーダルな音声知覚に関する研究」(大学院研究)
4. 実環境での音声知覚・音声明瞭度、音声信号処理・音声強調
2020年度においては、本テーマとして以下の研究などが含まれる。
- 「母語話者・非母語話者に対する雑音・残響が音声知覚に与える影響」(国際共同研究・大学院研究)
※一部はNew ZealandのUniv. of Aucklandとの共同研究
5. 音声に関する福祉工学・障害者支援、障害音声の音響分析や聴覚障害者・高齢者の音声生成や音声知覚
2020年度においては、本テーマとして以下の研究などが含まれる。
- 「高齢者の音声の聞き取り間違いと補聴」(国際共同研究・大学院研究)
- 「高齢者の音の知覚について」(国内共同研究・大学院研究)
- 「聴覚障害者の環境音に対する聴取・訓練について」(国内共同研究・大学院研究)
- 「言語障害者の音声に対する音響分析など」(大学院研究・卒業研究)
- 「聴覚障害者と音楽に関する調査」(大学院研究)
6. 実時間信号処理を含む音声処理アルゴリズムの開発、音に関わるシステムやアプリの開発
2020年度においては、本テーマとして以下の研究などが含まれる。
- 「音声のマスキングなどを含む音声信号処理」(国際共同研究・大学院研究・卒業研究)
※一部はNew ZealandのUniv. of Aucklandとの共同研究
- 「ディジタル・パターン・プレイバックに関する研究」(国内共同研究)
- 「体の動きなどを実時間で音に変換するシステム開発と評価」(大学院研究・卒業研究)
7. 音声の話者性
2020年度においては、本テーマとして以下の研究などが含まれる。
- 「音声に含まれる個人性に関する研究」(国内共同研究・大学院研究)
※科学警察研究所との学外共同研究
8. その他、音に関する研究全般
2020年度においては、本テーマとして以下の研究などが含まれる。
- 「楽器演奏者とピッチ知覚に関する研究」(国内共同研究・大学院研究)
- 「ドイツ語の歌唱に対する発音について」(国内共同研究)
- 「ドラムのリズムに関する研究」(卒業研究)
- 「カエルの鳴き声に関する研究」(国内・学内共同研究)